happykobe2005-10-20

こうして今日われわれが生きておること自体、これは偶然というか、不思議なのであります。毎日のように車にはねられて死んだり、怪我をしたり、その中には、将来随分偉くなる人もありましょうし、又現在立派な仕事をしておる人もたくさんある。そういうことを考えてみると、人間の成功に必然とか当然とかいってほこれるものは何一つだってありはしない。
自分があさはかであるから、わしは偉いとか、こういうことをやったとか、なんとかかんとかとみな好い気になっておるけれども、開き直って、お前本当にそう考えるか、とたずねられて、俺が偉いから当然こうなったのだ、と答えられるのは余程の馬鹿か狂人です。良心の一片だにあれば、なかなかそういうことは言えたものではない。
それを考えると、他人が偉くなったからといって羨(うらや)むこともないし、自分が恵まれぬからといって悔(くや)むこともなければ、怒ることもない、世を遁(のが)れて悶(もだ)ゆるなし、というのが本当であります。そういうことを考えてくると、はじめて真実とは何ぞやという問題に触れる。そこから人間・人生というものが分かってくるわけであります。