happykobe2005-10-17

その物の存在にどういう効用があり、意味があるか、ということをつきとめるのが、これを物質で言えば、自然科学であり、人間で言えば、哲学・道徳学、広い意味の人間学というものであります。自然の物質にして、已に量るべからざる思いがけない意義・効用がありとすれば、万物の霊長たる人間に於ては尚更のこと、どんな愚かな人でも、自然の物質以上の意義・能力があるのであります。
なる程自然科学の発達は、言うまでもなく実に偉大であります。それに較べて、そういう意味での哲学や人間学というものは恐ろしく後れております。しかし古来の偉人や哲人を研究すると、人間もここまで至れるものか、とつくづく感じるのであります。偉人や哲人を待つまでもありません。どんな人でも、必ずこれは絶対のもの、何億何十億居(お)ったって、同じ顔をしたものは一人もいない。すべてが個性的存在・独自の存在であります。だから絶対に他にない、独自の意義・機能・使命というものがある。これだけは確実であって、ただそれを自覚し、活用することが難しいだけであります。
その点は自然の物質も同じことで、本当にどういう素質や能力があるか、自然科学が次第にそれを解明して来てはおりますけれども、まだまだ無限の前途があるのであります。未来の科学はこの世界をどう変えてゆくか、誠に量るべからざるものがある。それを考えるだけでも楽しいのであります。況(いわん)やそれよりももっと人間の開発が出来るならば、どんな立派な社会が出来るか、益々これは楽しみであります。