happykobe2005-10-15

人間はいろいろの現実の活動を営むうちに、必ずそこから進化と同時に中毒が始まる。つまりあたるわけです。生きんとして生きることにあたる。中毒は影の形に伴うが如く生に伴うものでありまして、従って生の作用が活發であればあるほど、中毒も亦活發でである。例えば、栄養に富んだ食物、贅沢な食物を摂取することは、元来は大層良いことなのだけれども、だんだん続けておるうちに、必ずそのために中毒する。或は金を持つ、地位を持つ、権力を持つ、という様なことは皆これ人間としての生命の発展であるが、同時にそういう富貴栄達には必ず強い中毒性が伴うものであります。
文明も亦そうでありまして、民族は苦労して文明を発達させ、その発達させた文明のために自家中毒して、滅亡する。それを繰り返してきたのが世界の民族の歴史であります。だから民族の歴史・文明史は同時にその没落史でもある。
確かに現代は過去に較べて未曾有(みぞう)の科学技術・工業文明を発達させました。しかもそれが未曾有の発達であるだけに、中毒現象も亦かつてない大きなものがありまして、このまま進めば人類の滅亡か、少なくとも近代工業文明諸民族は没落する、とまで論ぜられる様になってきておる。