happykobe2005-10-13

革命家というと、一般に理想的解釈をするのでありますが、あらゆる革命家に共通してあるものは実に権力欲というものであります。このためにはなにものを犠牲に供してもはばからぬという非人間性であります。これは近代諸国家の革命を見ても、共通の真理であり、事実であります。人間のあらゆる欲望の中で権力・支配の欲望ほど深刻なものはありません。自分が権力を握って人を支配するということのためには、なにものを犠牲ににしてもはばからない。実に強烈なものであります。
これを考える時に、明治維新というものは実に立派であった、とわれわれは沁沁(しみじみ)思わざるを得ないのであります。
ご承知のように徳川幕府は三世紀近い長い間続きましたが、その下には所謂三百諸侯、二百六十餘藩というものがあって、みなそれぞれ言わば小日本国をつくっておったわけであります。そこには名君と言われる人、賢宰相と言われる人が、或は碩学(せきがく)とか、鴻儒(こうじゅ)・名僧とか言われる人々が輩出致しまして、儒教・仏教・国学神道という様な学問や信仰が真剣に研究され、教育されて、実に崇高な教養・信念が養われて来ておった。これが明治の革命をよく維新にしたと申して宜しいのであります。