今日の近代文明社会においては、その一切の根底である「自らを修める」ということをすっかり棚上げしてしまっている。自分を修める、自分を磨く、自分を充実する、自分が自分を把握する、徹見するということを忘却し、ただ、外物、外界、他人ばかりを問題にしておる。
すべてにおいて、自分を留守にし、あるいは棚に上げ、他人のことばかりいう。自分の義務を一つも顧みないで、権利ばかり主張する。そして他人の攻撃ばかりやる。お辞儀することも挨拶もろくにできないで、お互いに人を馬鹿にしあう。狎れあう、柄にもなくいい気になって勝手放題な真似をする。